「Amazon Kinesis」というサービス、AWSを用いてデータ分析をされている方であれば聞いたことがあるかもしれませんが、多くの方はなかなか耳にすることがないサービス名なのではないかと思います。
データの活用が重要視されている近年、データ処理やデータ分析等を支援するためのプラットフォームサービスがいくつも提供されています。
本記事では、そういったリアルタイムデータ処理プラットフォームの一つである、AWS(Amazon Web Services)が提供するAmazon Kinesisについて解説します。
Amazon Kinesisとは
Amazon Kinesisは、Amazon Web Services(AWS)が提供するリアルタイムデータ処理プラットフォームです。
このサービスは、データをリアルタイムで収集、処理、分析し、高速なデータストリームを効果的に管理できるように設計されています。
Kinesisを活用することで、ビジネスはリアルタイムでの意思決定やモニタリング、セキュリティ監視、ストリームデータの保存など、さまざまな用途に対応できます。データを瞬時に取得し、リアルタイムでデータ駆動型のアプリケーションを構築できるため、ビジネスの効率性と競争力を向上させることができます。
主な機能
では、Amazon Kinesisの機能には具体的にどのような機能があるのでしょうか。
4つの機能についてご説明します。
Kinesis Data Streams(データストリームのキャプチャ・処理・保存)
Kinesis Data Streamsは、リアルタイムデータのキャプチャ、処理、保存を可能にします。データをシャードに分割し、スケーラビリティを実現します。
これにより、大量のデータを同時に処理し、迅速な反応を可能にします。データのストリーミングと処理は、シンプルなAPIを介して実現でき、異なるデータソースからのストリームを統合することができます。データの複製やフィルタリングも行え、高信頼性のデータ処理を実現します。
Kinesis Video Streams(ストリーミング動画のキャプチャ・処理・保存)
Kinesis Video Streamsは、ライブ動画の収集、処理、保存をサポートします。セキュリティカメラ、ドローン、IoTデバイスからのライブストリームをキャプチャし、自動的に圧縮、保存します。
さらに、機械学習モデルやカスタムアプリケーションに統合でき、リアルタイムのビデオデータ分析を可能にします。セキュリティ監視、リモート監視、メディアストリーミングなど幅広い用途で活用できます。
Kinesis Data Firehose(データストリームをAWSストアにロード)
Kinesis Data Firehoseは、リアルタイムデータをAWSのストア(たとえばS3、Redshift、Elasticsearch)に効率的にロードするためのサービスです。
データストリームを単純な設定で指定したストアに転送でき、データの変換、圧縮、バッファリングなどのタスクを自動的に実行できます。これにより、データの安全な保存、分析、可視化が容易になります。データの欠落や遅延も最小限に抑え、信頼性を高めます。
Kinesis Data Analytics(SQLやJavaでのデータストリーム分析)
Kinesis Data Analyticsは、リアルタイムデータストリームをSQLまたはJavaを使用して簡単に分析できるサービスです。
データストリームからリアルタイムで価値ある情報を抽出し、結果を別のストリームに送信できます。SQLクエリやカスタムアプリケーションを使用して、データのパターン検出、異常検出、集計などを実行できます。リアルタイムの洞察を得て、ビジネスプロセスの最適化に役立てます。
Amazon Kinesisを利用するメリット
次に、Amazon Kinesisを利用するとどのようなメリットがあるのかをご紹介します。
リアルタイムのデータ分析が可能
Kinesis Data Analyticsを使用すると、SQLやJavaを活用してデータをリアルタイムで分析できます。データ収集後70ms(0.070秒)以内に読み込んだデータをリアルタイムでアプリケーションで利用でき、Kinesis Data Analyticsでは1秒未満のレイテンシーで分析結果を返すため、Kinesisを利用した収集・分析プロセスはリアルタイムで完結できます。
迅速にデータを取得できる
Amazon Kinesisのリアルタイム分析を支えている要素としてデータ取得の速さがあります。
また、データが生成された時点ですぐにAmazon Kinesisストリームにデータを書き込めます。
データの生成元に障害が発生した場合でも、データが失われることがありません。Kinesis Data Firehoseについてもストリーミングデータをキャプチャしてから60秒以内に送信先のサービスへロードされるため、ストアのプロセスにおいてもほぼリアルタイムを実現できます。
複雑なストリーム処理をフルマネージドで実行
Kinesisは全ての機能においてフルマネージドなサービスとなっています。入力のデータ量に応じて自動でスケーリングをするため、ユーザーがメトリクスを監視しながらサイジングし直すといったような手間がかかりません。
Kinesis Data Firehoseにおいても、ストリーミングデータのロードに必要なAWS上における全てのリソースが自動でプロビジョニングされるため、インフラの管理が一切必要ありません。
トラフィックの増加にも対応可能
一時的にトラフィックが増加しても、データのバッファリング対応がされます。データを取得し損なう危険性を低く抑えることができます。サイズの上限もなくストリーミングデータに対応できるため、多量のソースからのデータを処理できます。
Amazon Kinesisの活用例
リアルタイムデータ分析
・ウェブトラフィックモニタリング
ウェブサイトやアプリケーションのトラフィックデータをリアルタイムで収集し、リアルタイムダッシュボードに表示してトラフィックの変化を監視します。これにより、ユーザーエクスペリエンスを改善し、障害の早期検出が可能となります。
・リアルタイム広告配信
オンライン広告プラットフォームで、リアルタイムデータを活用してターゲット広告を配信し、広告キャンペーンの最適化を行います。
IoTデータ収集と処理
・スマートホームデバイス
スマートホームデバイスからのデータ(センサーデータ、ビデオストリームなど)を収集し、リアルタイムでモニタリングおよび制御を行います。たとえば、セキュリティカメラやスマートテレビのデータを収集し、リモートでアクセスできるようにします。
・産業IoT
工場や製造プラントからセンサーデータを収集し、機械の健全性を監視し、予防保守を実施します。
セキュリティ監視とログ分析
・セキュリティイベント監視
ファイアウォール、IDS/IPS、セキュリティカメラなどからのセキュリティイベントデータをリアルタイムで収集し、潜在的なサイバー攻撃を検出し、対応します。
・ログ分析
サーバー、アプリケーション、ネットワークデバイスからのログデータを収集し、異常を検出して問題を迅速に解決します。
リアルタイムデータウェアハウス
・データウェアハウスのリアルタイム更新
Amazon Kinesisを使用してデータをリアルタイムで収集し、データウェアハウスに即座に更新することで、ビジネスインテリジェンスと分析にリアルタイムデータを提供します。
金融取引監視
・リアルタイムトレード監視
金融取引プラットフォームでは、取引データをリアルタイムで監視し、不正取引や異常な取引を検出します。
まとめ
Amazon Kinesisは、現代のビッグデータ処理およびリアルタイムデータ分析に対応するためのプラットフォームサービスであり、非常に柔軟で多様な活用可能性を提供しています。
Kinesisを活用することで、リアルタイムデータの収集、処理、分析、保存が可能となり、ビジネスプロセスの迅速な意思決定やアクションが実現できます。また、スケーラビリティ、多様なデータソースのサポート、高度なデータ処理、セキュリティ監視など、多くのメリットがあります。
IoTデータ収集、セキュリティ監視、金融取引監視など、さまざまなユースケースで利用されています。ビッグデータの処理と分析に興味を持った方にとって、Amazon Kinesisは強力なツールとなるのではないでしょうか。
本記事を読んでAmazon Kinesisやデータ分析のプラットフォームに興味を持っていただけたのであれば幸いです。
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